MOBILE CLINIC
2020年2月ー春節後の武漢が都市封鎖された頃、モバイルクリニックの原型となるコンテナクリニックのアイデアは生まれました。しかしまだこの頃の日本ではcovid-19は対岸の火事。それから数か月で世界の様相を一変させることになるとは、誰も想像していませんでした。
モバイルクリニックは、当初ピースノート社とFOREMOST社が協力し、「コンテナハウスが中国の医療機関で役立てば」との思いから『建築用コンテナに日本でマスクを積み込み武漢に寄贈する』というプロジェクトとしてスタートしました。
2020年3月ーコンテナ製作が進む中で、新型コロナウィルスはあっという間に日本国内へも流入し、拡大していきました。日本国内でもマスクが急激に品薄となり、寄付どころか国内でも手に入らない状況になりました。中国のみならずヨーロッパでもロックダウンが開始され、ニューヨークでは感染者数も死者数も日を追うごとに指数関数的に増加し、街からは人の姿が消えていきました。
2020年4月ー3月後半にはコンテナが日本に到着したものの、依然として日本のマスク不足は続いていて、中国や東南アジアから輸入しているような状況でした。「今は日本の医療体制を守る必要がある」ピースノートとFOREMOSTは、方向性を変え、コンテナを活用して院内感染を防ぐためのモバイルクリニックの開発・製作に本格的に着手しました。
2020年5月ー感染症専門医や専門病院を訪ね、どのような機能を持てば感染症対策に有効なプロダクトができるのかを考えました。同時に開発チームも強化。神戸で災害用電池やオフグリッドステーションを販売するヴィガラクス株式会社がチームに加わり、5月1日付で【建築用コンテナを使用した移動型診療所に関する開発協定】が正式に締結されました。3社がそれぞれ持つ異なる強みを掛け合わせることで開発スピードは加速し、Basicタイプとなるモバイルクリニックの製作が始まりました。『院内にウィルスを持ち帰らせないためのゾーニングの考え方』『患者と接触するレッドゾーンでも、できるだけ感染リスクを減らすための陰圧設備』など、モバイルクリニックのベースとなる設計はこの時にできました。
2020年7月ー7月4日に、全国初となるモバイルクリニックがピースノート社の寄贈で宇都宮市夜間休日診療所に設置、翌月の8月25日には、ヴィガラクス社が実施したクラウドファンディングを活用し兵庫県立尼崎総合医療センターに設置されました。
2020年10月ー『医療用コンテナ』として、建築用コンテナを活用し開発されたモバイルクリニックが、日本で特許を取得しました。
そして、世界中で新たに生まれる変異ウィルスとの闘いとなった現在、最前線で闘う医療従事者を守るために、北海道から沖縄まで全国各地に設置が進んでいます。
2022年4月ーモバイルクリニックが、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が主催する、第8回「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)」において、感染症対策に資する先進的な取り組みを表彰する部門賞「STOP 感染症大賞」の最優秀賞を受賞しました。
4月27日に都内会議場で開かれた受賞式へは、製造メーカーであるFOREMOST株式会社が3社を代表して出席してきました。
2024年1月ー元日の穏やかな団らんを、突如として破壊した大地震は、石川県では観測史上初めてとなる震度7を記録しました。
現地では、電気も水道も止まり、衛生環境も悪化する中で、インフルエンザをはじめとする感染症が蔓延していきました。
そんな中で、厚生労働省や内閣官房、そして石川県からの要請で、日本各地のモバイルクリニックが現地避難所に運ばれて、緊急的に診察室として活用されました。
平時には全国の病院で活用され、有事においては直接現地まで輸送して利用できる『医療コンテナ・モバイルクリニック』の有効性が改めて確認され、災害大国の日本で強靭な社会体制を築いていく必要性を実感しました。
各病院や施設の運用方法に合わせる形で、カスタマイズ型のモバイルクリニックも多数製作してきました。これからもモバイルクリニックチームは、日本と世界の医療従事者を守るため、ひいては地域の医療体制とそこに暮らす人々の生活を守るために、不断の開発・改善を進めていきます。